ちょっと詳しい 肉離れについて

「バレーボールをしていて、急にふくらはぎに痛みを感じて、普通に歩けなくなってしまったのですが…」
「ひったくりに遭った際、左手の鞄を放さずバイクに十数メートル引きずられ、左腕が肩から上に挙がらなくなったのですが…」

筋肉のトラブルで代表的なのが肉離れ(挫傷)と打ち身(打撲)です。

肉離れと打ち身、この2つを簡単に分類すると、

となります。

肉離れの原因とは ~ 肉離れはこんな時によく起こります

筋肉の柔軟性が低下している時
ウォーミングアップをしないで急に全力を出した時などが該当します。
また、成長期の小・中学生は骨の成長度合いに比べ筋肉の成長度合いが遅く、柔軟性が成長期以前より低下するので、注意が必要です。
筋肉の疲労が蓄積、増大している時
体を動かした後はそれに応じたストレッチ、休息、食事により筋肉を回復させる必要があります。
寝不足が続いているのに無理に体を動かしている人、きちんと栄養をとらないダイエットをしながら体を動かしている人は注意が必要です。
筋肉が急激に大きな力に対抗しようとした時
「ひったくりに遭った際、左手の鞄を放さずバイクに十数メートル引きずられ、左腕が肩から上に挙がらなくなったのですが…」この場合がこれに該当します。
筋肉は縮むことで力を出します。筋肉にとって縮みながら力を出すのに比べて、伸ばされながら力を出すのは負担が大きくなります。
このひったくりに遭った方の場合、筋肉が伸ばされながら大きな力に対抗することになったため、筋肉のダメージは大きなものでした。
筋肉に小さな力でも長時間・繰り返し負担をかけた時
針金を何回も同じところで曲げていると折れてしまいます。一回の動作では何ともなくても、何回も同じ動作を繰り返すことで筋肉には大きな負担となります。
筋肉に不自然な姿勢を長時間していて負担をかけた時
同じ姿勢でじっとしていることは、特に筋肉が働いていないように思えますが、その姿勢を保つための筋肉だけがずっと働いている状態です。
不自然な姿勢を続けることは筋肉には大きな負担となります。

肉離れの程度と肉離れの症状 ~ 肉離れはこのように分類されます

電子顕微鏡で見た筋肉の図 左の図は筋肉を電子顕微鏡で見たものです。
筋肉は電子顕微鏡で見ると、細い線維が束となり、その束が更にまとまって筋肉を形作っています。この細い線維が筋線維と呼ばれるものです。
肉離れをはじめとする筋肉の損傷は、筋線維のダメージ(断裂)の度合いで第1度、第2度、第3度に分類されます。

第1度 筋線維の断裂は認められない
特に力を入れたり、動かしたりするのに不都合はないものの、力を入れようとしたり、動かそうとした時に不快感や違和感を感じる箇所がある場合が第1度に該当します。
ちょっとスジが違ったという場合の状態に近いと思います。
第2度 筋線維の部分断裂がある
腫れていたり、押さえると痛みがあります。動かそうと思えば動かせなくはないけれど、場合によっては痛みのために動かせない場合が第2度に該当します。
一般に肉離れと言われるのはこの状態です。
第3度 筋線維が完全に断裂している
触るとボコッと凹んだり、強い痛みがあります。動かそうとしても動かせない場合が第3度に該当します。
第3度では、専門医にて手術適応となります。

肉離れがよく起こる箇所とチェック方法

肉離れは足の筋肉によく起こります。知らず知らずのうちに柔軟性が低下していることが多いのでチェックしてみて下さい。

太ももの前面(大腿四頭筋)
<チェック方法>
大腿四頭筋の柔軟性のチェック うつ伏せになって片足ずつ行います。膝を曲げてきて踵(かかと)がお尻にくっつけば大丈夫です。この時、足首を手で持ってしても構いません。
踵とお尻の距離が握り拳が入る位、10cm以上あるようでしたら、注意が必要です。
太ももの後面(大腿二頭筋)
<チェック方法> 腰の悪い方、膝の悪い方は無理に行わないで下さい。
大腿二頭筋の柔軟性のチェック あお向けになって片足ずつ行います。膝を曲げないようにして足を上げます。この時、バスタオルを用意して、踵にバスタオルを引っかけて手で引っ張って足を上げても構いません。足が直角近くまで、大体80度位まで上がっていれば大丈夫です。
足が60度まで上がらないようでしたら、注意が必要です。
ふくらはぎ(腓腹筋)
<チェック方法>
腓腹筋の柔軟性のチェック 椅子に座って片足ずつ行います。椅子の高さは、足裏がきちんとついた状態で、膝の曲がりが直角程度になる高さが適当です。浅く腰をかけ、膝の曲がりが直角の状態から、足裏が浮かないようにして足を後ろに引きます。
足をほとんど後ろに引けないようでしたら、注意が必要です。

もしも、肉離れをしてしまった時の応急処置

運動中に肉離れを起こす場合が多いと思いますが、何か違和感を感じた時点で、できるだけ速やかに運動を中止して下さい。何だ、当たり前のことを言ってるよと思われるかもしれませんが、私の経験上、8割以上の方がそのまま運動を継続してしまいます。

その場でできるのであればその場でRICE処置を行って下さい。RICE処置は早ければ早いにこしたことはありません。その場では無理な場合は帰宅後でも大丈夫です。このようにきちんとRICE処置ができていれば、その後に医療機関に行った際に褒めてもらえるはずです。私なら褒めます。

RICE処置の詳細についてはこちらから

肉離れで腫れや痛みが強い時に、お風呂で長湯をするなど患部を温めることは厳禁です。

肉離れ後のスケジュール ~ このようにして運動復帰を目指します

比較的多くみられるふくらはぎを肉離れした場合を例に説明します。

第1ステージ 腫れや痛みを引かせる
RICE処置を主に、腫れや痛みを引かせることを最優先とします。
必要があれば松葉杖を使いふくらはぎに体重をかけないようにします。
足首の運動も積極的には行いません。
第2ステージ ふくらはぎの周囲を動かせるようにする
第1ステージでは腫れや痛みを引かせることを最優先にしていたため、どうしても動きを制限する期間ができます。
そのためふくらはぎの周囲、例えば膝や足首、足の指などの動きが悪くなってしまいます。その動きを元に戻していきます。
また、腫れや痛みも大分引いてきているので、少しずつふくらはぎに体重をかける練習も始めます。
第3ステージ ふくらはぎの動きを元に戻す
ふくらはぎの動かせなくて悪くなった動きや、落ちてしまった筋力を元に戻すためのトレーニングやストレッチが主になります。
ふくらはぎの痛みと相談しながら進めていきます。
  1. 普通に歩けるようにする
    • 踵をつく⇒足裏全体をつく⇒踵が浮く⇒爪先が離れるという歩き方で、しっかりと体重をかけてもふくらはぎに痛みが出ないようにトレーニングやストレッチをします。
    • トレーニングの一例として、壁や机などに手をついて体を支えられる状態にして、両足で爪先立ちを繰り返します。
  2. 軽く走れるようにする
    • 足が地面につく、爪先で地面を蹴っても痛みが出ないようにトレーニングやストレッチをします。
    • トレーニングの一例として、壁や机などに手をついて体を支えられる状態にして、痛めた方の足だけで爪先立ちを繰り返します。
  3. ダッシュ、ジャンプできるようにする

こんなリハビリ方法もあります ~ リハビリ器具を自作してトレーニングする

ここでは誰でも簡単・手軽に自作できるリハビリ器具を使って、ふくらはぎの肉離れ後の関節可動域・筋力改善トレーニング方法を紹介します。

リハビリ器具の自作についてはこちらから

上記スケジュールの第2ステージから、このトレーニングを行います。
以下では、右ふくらはぎを負傷したものとして説明していきます。

ステップ1 椅子に座って、両足でのトレーニング
トレーニング開始姿勢 正面 トレーニング開始姿勢 側面
足は若干開いて、正面から見て爪先と膝が一直線上に並ぶようにします。
足を後ろに動かすトレーニングのために若干浅めに座ります。
両足を板の上に。この時右の足裏全面がつく位置まで、左足で板を動かして下さい。
最初は左足だけで板を動かし、右足は乗せておくだけです。(右足は左足によって動かされている状態です。)
 
トレーニング 前に動かす トレーニング 後に動かす
右の足裏が浮かない範囲で左足で板を前後に動かします。
無理に右足に体重を乗せる必要はありません。
足を後ろに動かす時も痛みと相談しながら、少しずつ後ろに動かせるようになればいいので、焦らずに。
 
トレーニング 左に動かす トレーニング 右に動かす トレーニング 左回しに動かす トレーニング 右回しに動かす
ある程度、前後に動かせるようになったら、右足首の動きをよくするために、左右に動かしたり、円を書くように動かします。
左足の動きに右足がついていけるようになってきたら、少しずつ右足にも力を入れて、両足で動かすようにして下さい。
両足でできるようになったら、ステップ2に進みます。
 
ステップ2 椅子に座って、右足でのトレーニング
トレーニング開始姿勢 トレーニング 前後に動かす トレーニング 左右に動かす トレーニング 左右に回す
両足でしてきたことを右足だけで行います。
踵(かかと)が浮かないように、右の足裏をしっかりと板の上につけた状態で行って下さい。
右足を板の上にしっかり乗せた状態で動かせるようになったら、ステップ3に進みます。
 
ステップ3 立った状態で、体重をかけて右足でのトレーニング
トレーニング開始姿勢 トレーニング 前後に動かす トレーニング 後にしっかり動かす トレーニング 左右に動かす トレーニング 左右に回す トレーニング 内側に捻る トレーニング 外側に捻る
必ず何かに手を添えて行って下さい。
立ってしっかりと右足に体重をかけて行います。
特に十分体重をかけて、右足を後ろに動かせるようにして下さい。

このトレーニングは肉離れの予防にも効果的です。

是非、ケガをしにくいからだ作りに役立てていただきたいと思います。

肉離れ対策のテーピングの実例 ~ こんな風にテーピングしています

肉離れ対策としてテーピングする場合、2通りのテーピングがあります。
筋肉の動きをサポートするテーピングと、関節の動きを制限し、間接的に筋肉の負担を軽減するテーピングです。

筋肉の動きをサポートするテーピング
テーピング実例 テーピング実例 アップ
チームミヤタの鈴木真理選手(2007年当時)に施したテーピングです。太ももの内側、ふくらはぎ、すねにテーピングしています。
基本は筋肉の走行に従って、筋肉の動きをサポートするようにテーピングしますが、ペダリングの邪魔にならないように、教科書的なテーピングの仕方ではなく、アレンジしてあります。
関節の動きを制限し、間接的に筋肉の負担を軽減するテーピング
手首をよく使い肘に痛みが出た場合などに使います。(手首をよく使うのに肘に痛み?と思われるかもしれませんが、手首を動かす筋肉は肘の周辺から起こります。)
テーピングの仕方は簡単です。手首をクルッと一巻き、もしくはもう一巻き重ねてにテーピングするだけです。 これだけですが、手首の動きは制限できます。

肉離れ対策の盲点 ~ 本当にその筋肉だけに原因があるのでしょうか?

例えば、走っていてふくらはぎを肉離れしたとします。どうしてでしょうか?
ふくらはぎの筋力、柔軟性が低下している時に無理に走ったからじゃないの?と思われる方、多いと思います。
では、どうしてふくらはぎの筋力、柔軟性が低下していたのでしょうか?

理由その1
元々ふくらはぎの筋力、柔軟性が劣っていた。
理由その2
走り込みの練習をして、太ももの筋肉に負担がかかり、それをカバーするために知らず知らずのうちにふくらはぎにも負担がかかり、筋力、柔軟性が低下してしまった。
理由その3
爪先で蹴るような走り方でふくらはぎに負担をかけて筋力、柔軟性が低下した。
理由その2、その3の場合、単純にふくらはぎの肉離れ対策として、ふくらはぎの筋力、柔軟性を高めるだけでは不十分となります。
繰り返し肉離れを起こす場合、その原因をもう一度よく考えてみる必要があります。

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